医療接遇&人材育成の教科書 病院の採用担当者が知っておきたいコメディカル採用の基本(2.準備編)
1:「準備する」編
今回も最初に、「準備する」ステップについて必要なことをもう一度おさらいしましょう。
~このステップを、「採用計画」と呼ぶ組織も多数あります。
前年の総括と現状のマーケット分析をし、どのように母集団形成するかを決定、予算を立てます。
組織によってはどのようにPRするかコンテンツを作成するケースもあります。また、面接官の教育もこの段階で行います。
~ここまでが、初回のご説明でした。
2:前年の総括
まずは前年の総括からスタートする、という病院様は比較的熱心に採用に取り組まれておられるところが多いです。
できれば、「全ての採用が終わってから思い出す」のではなく、日々の採用業務について「少し気になること」「意外に思ったよい反応、悪い反応」「面倒くさいなと感じたこと」「応募者から聞かれたこと」小さなことをメモしておく習慣をつけられるといいです。
一連の流れが全て終了してから「総括」をしようと思っても、小さな出来事や失敗ともいえないような些細なミス、ちょっとした疑問などは、案外思い出せないものです。
総括、というと「内定率」や「応募数の増減」などの数字に目がいってしまいがちになります。
もちろん大切な指標ですが、その指標を左右しているのが上記の「ちょっとした違いの積み重ね」になります。
日々、「ふと思いついたこと」を記録するところからよい総括がスタートします。
3:現状のマーケット分析
採用環境は時期・背景によって大きく変化します。
薬学部の4年生⇒6年生への変更や、診療報酬改定など、「個々の病院ではどうすることもできない大きな流れ」での変化もありますし、「地元の大病院が移転したことによって、一時的にそのエリアの看護師採用マーケットに転職希望者が増加」「新設看護学校が地元に誘致決定」など、局地的に起こる変化もあります。
また、求人媒体会社の新商品や、転職者側が何を利用して転職するのか(例:スマホやSNSの利用状況の拡大)などの変化も重要です。
病院によっては、「2,3年に一度の採用で、採用しない年は市場調査など全く行わない」というところもありますが、忙しい中で業務に優先順位はつけなければならないにせよ、上記の「大きな流れ・変化」については知識を更新されておくことをおすすめします。
4:どのように母集団形成をはかるか
一般企業の採用では本当によくあるケースなのですが、「採用成功かどうかの基準を、前年よりも応募者が増加したか、辞退者が減ったか、などの数字にしている」ことはあまりオススメしません。なぜなら「現状のマーケット分析」パートでも述べたように、採用に関しては外的な要因が大きく数字を左右します。
また、「応募者が多い=いい採用」に、必ずイコールで結びつくわけではない、という点について意識してください。
「応募者が予想外に多かったことによって、一人当たりの面接時間が半分になってしまった。応募者の意思確認が不十分なまま最終選考まで進んでしまい、結果辞退率が大幅に上がってしまった」ということもあり得るからです。
究極的に望ましいのは、「募集をしたタイミングで、病院にとって必要な能力の人材が、必要な人数応募してくれて、しかも全員入職してくれた」という状況です。
現実的には難しいわけですが、それでも「どこを工夫したら、理想の状態に近づけるのか」という「こまかい足し算」をしながら母集団形成について計画していきましょう。
5:コンテンツ制作や面接官の教育
病院内だけで完結するのがなかなか難しいのが、上記のような直接的ではない採用ツールです。
もちろん、採用ホームページなどでは、昔に比べCMSシステムなどで、専門的な技術がなくても対応できるツールが増えてきています。
と同時に、以前であれば「A4の求人票一枚、ハローワークに提出するだけ」というところは少しずつなくなっていきつつある、ということです。
転職希望者の側で、複数の病院を比較した時、「自分の欲しい情報をわかりやすい形で提示している病院」と、「法律的に必要最低限の情報しか提示してくれない病院」ではどちらがより魅力的に見えるか、答えは明らかですね。
6:中途採用と新卒採用
中途採用と新卒採用について、どのように使い分けるか、ということも一度見直してみるのも役に立ちます。
「例年2人、新卒採用するのが長年の慣行だから」という理由ではなく、組織にとってどのような人材が必要なのか、それをかなえるのはいつ、何の媒体を使って採用するのが望ましいか、定期的にチェックしましょう。
新卒採用と中途採用では、応募者の年齢層、就職に際して重視すること、キャリアに対する考え方、給与や勤務体系に関する要望など様々な点でおおきな違いがあります。
どの病院でも「新卒採用のほうがよい」「中途採用のほうがよい」ということはありません。
新卒採用には「定期的に採用することで生じる経年比較で蓄積される採用技能向上」「新人を指導することによって生まれる職員の意識・能力向上」「比較的若年層を採用しやすいことで、長期勤続によるキャリア形成を図る」などの中途採用にはないメリットがあります。
中途採用では「必要な時に必要な人材をピンポイントで獲得できる」「組織の人数構成の最適化に対応しやすい」「専門看護師など、新卒採用では採用不可能な人材にアクセスできる」など、それぞれにはないメリットがあり、それをどのように組み合わせるかを組織に応じて考える必要があります。
次回は、「3.募集から面接まで」、いよいよ実行するステップについてまとめて行きます。