医療接遇&人材育成の教科書 病院の採用担当者が知っておきたいコメディカル採用の基本(3.募集・面接編)
1:「募集から面接まで」編
基本編のおさらいです。【実行するステップです。ここが一番の山場となります。応募者を選別すると同時に、応募者から選別される場でもあります。「ふさわしい人材像」の選定が正しくとも、「ふさわしい人材像に当てはまっているか」を間違えてしまえば結果は失敗です。】
2:母集団形成の方法
もっとも費用がかからない母集団形成は「病院内の掲示、ホームページでの採用案内」です。ホームページの作成については、「最初に一度情報を作ってから一度も更新していない」という病院様も多く見受けられますが、夏季休業などの臨時休業のお知らせなど、随時更新できた方がよいコンテンツもあります。採用募集案内もその一つです。メンテナンス、更新を外部に委託しているとページ一枚更新するごとに費用がかかるので、採用募集案内を出すのが難しい、とおっしゃる病院様も多いのですが、場合によっては非常に安価に「パソコンでメールを送ることが人なら誰でも更新できるホームページ」を作成することも可能です。採用募集案内に関しては、「現在募集をしているのかしていないのか、募集要項、問い合わせ連絡先」については必ず最新情報をホームページに掲載してください。特に転職活動の場合、「勤務地」が重要な応募企業の選定理由になります。せっかく地域の病院を調べてホームページにアクセスしたのにも関わらず、採用情報が載っていないことで問い合わせを見送るケースも十分に考えられます。なお、新しくホームページを立ち上げることを検討される場合は、必ずスマホフレンドリー(スマートフォン、パソコン、などそれぞれの環境にあわせて表示を自動で変えられる)対応にしていきましょう。直接ホームページを見て応募してくる人数は少なくても、他の媒体で興味を持ってくれた求職者に情報を提供することが重要です。
3:公共の職業紹介を利用する
次のステップが、公共の職業紹介を利用する、ということになります。筆頭はハローワークへの求人です。その他にも、看護師募集なら「ナースセンター」、他にも資格によっては協会で就職紹介を無料で案内してくれるケース、新卒採用なら各大学、短大、専門学校などへの求人票もこちらに分類していいでしょう。いずれにせよ、「求人票の出しっぱなし」は避けましょう。採用が終了したらきちんと連絡をすること(大学・学校の場合は内定者がでたら連絡すること)で、ハローワークの担当者、大学の担当者に良い印象を持ってもらうことも重要です。窓口で、「きちんと採用活動をしている信頼のできる病院」として求職者に紹介してもらえるかどうかは、辞退率などにも大きく関わってきます。情報が古いままボーナス実績の年度など、募集要項に○○年実績、という様な情報が入っている場合はきちんと毎年情報更新しましょう。
4:民間の採用支援業者を利用する
採用人数が多い場合、または就業までの時間的余裕がない場合、民間の採用支援事業者を利用する事になります。その費用は数十万円からスタートし、採用人数の多い病院様では数千万円を予算として計上されているところもあります。手段としては「WEBの求人サイト」「合同企業説明会」「新聞広告」「タウン誌の求人広告」「折込求人広告」「人材紹介」「紹介予定派遣」「派遣」「交通広告」など、多種多様なものがあります。それぞれにメリット・デメリットがあり、欲しい人物像、時期、人数などの環境によって使い分けられるように普段から情報収集をしておきましょう。
5:選考ステップの設定
選考手法について検討したことがある、という病院様は実際はほとんどありません。一般的な「履歴書の送付による書類選考」「筆記試験」「面接」というオーソドックスな手法の組み合わせになりますが、「いつもこのようにしているから」という習慣で選考ステップを決定されていることがほとんどです。もちろん、筆記試験などでは「経年の情報蓄積と比較」という目的があるためなかなか変更できない事情もあります。その他の選考手法に関しては、「選考手法を変えたことで、応募者の動機付けが強まり、辞退率が下がった」「新卒採用での集団面接をやめ、全て個人面接で半分の時間を個別の質疑応答にあてたところ、配属後のギャップを感じる割合が下がって、早期離職の低下に結びついた」など、費用もかけずに直接的な効果を生む可能性があります。十分に検討の対象に入れましょう。
6:面接官のトレーニング
面接官を担当するのは、多くが所属する部課長を経て、決定権のある役職者もしくは院長/理事自ら最終面接、という流れが一般的です。面接官と応募者以外、人事が立ち会うこともほとんどない面接。部課長が、「どのような面接をしているか」把握していますか?例えば、採用面接でしてはいけない質問に、「ご主人は何をしていらっしゃるの?」「最近読んだ本で、気に入ったものはなんですか?」など雑談のような気持ちで気軽にした質問は、実は面接でしてはいけないNG質問です。愛読書については「なぜダメなの?」と不思議に思われる方も多いのではないでしょうか。出身地、家族状況など「応募者本人に責任がないこと」や、愛読書、尊敬する人など「自由であるべきもの」にかかわる事項について質問することは、採用に関する適性・能力に関係のない事柄なので、してはいけないこととされています。応募者もこの点について、知識がある人が増えていますから、定期的に面接官に確認しましょう。「最低限してはいけないこと」について面接官に共通認識ができたら、面接官全員の「評価基準」の統一を目指しましょう。「個人的な好み」などで面接結果が左右されないように、面接官に意識してもらう必要があります。
今回は、募集から面接までの手順を確認しました。次回は、最終回です。「4.内定から入職まで」無事に採用活動の締めくくりをする手順についてご紹介します。